諏訪の風景

諏訪の風景

モネの光と影

(作者の思いと鑑賞者の思い)

以前モネの睡蓮を三か所の美術館で見る機会があった。国立西洋美術館、大原美術館とブリジストン美術館である。ブリジストン美術館では、睡蓮の絵がさほど広くない部屋に壁一杯に懸けられていた。とても大きな作品だったので、離れた所にあった椅子に腰掛けてしばらく全体を眺めていた。しかし美術館の暗い調光のなかで見たその絵は美しいとは感じられず、感動を呼び起こされるものではなかった。

いまにして思えば、この作品は、睡蓮の花だけに拘って見るのではなく、池の面に反射する太陽の光や池の周囲に生える草木の影が水面に映っているさまなどを鑑賞すべきであった。しかし、その時そこまで感じ取る感性は持ち合わせていなかった。

鑑賞者は絵も歌も作者の思い通りには理解してくれない。最近ある歌会で私の歌が難解だと、内容説明を求められたが、鑑賞者にお任せしたいとお答をした。


(ナイル短歌工房誌・平成26年3月号)

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